人間そっくりの表情は、どこまで来た?中国「EX Robots」の人型ロボットを動画で見る

中国・大連のEX Robotsが開発する、人間に近い外観と表情を持つバイオニック人型ロボットを2本の動画で紹介。同社の事業、技術の特徴、現在の用途と導入時の論点を整理します。

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人間のような顔、髪、肌、そして細かな表情。今回ご提供いただいた2本の動画には、椅子に座る複数の人型ロボットと、調整中とみられる機体や人工の手、開発設備が映っています。映像内の設備にある「EX」の表記と、公開されている施設・製造現場の情報を照合すると、中国・大連のEX Robots(EX机器人)に関連する映像とみられます。

人間に近い外観と動きを持つ人型ロボットの様子(アップシェア提供動画)
開発・展示施設内とみられる映像。人工の手や調整設備も確認できます(アップシェア提供動画)

EX Robotsは何をしている会社なのか

EX Robotsの運営企業は、中国語社名で大连蒂艾斯科技发展股份有限公司。遼寧省大連市を拠点に、知能型のバイオニック人型ロボットについて、研究開発、製造、販売、サービスを手がけています。

同社の特徴は、工場作業向けの「力持ちロボット」よりも、人と向き合ったときの見た目や表情に重点を置いていることです。シリコーン製の皮膚、細かなモーター、制御技術などを組み合わせ、まばたき、口元、首の動きといった人間らしい表現をつくります。公式サイトでは、仿真人型、医療、行政・受付などの用途を事業領域として紹介しています。

また大連では、研究・組み立ての様子も見られる「EX未来科技館」を展開しています。遼寧省政府の紹介では、バイオニック人型ロボットの展示、研究開発、組立・調整、科学教育を組み合わせた施設とされています。ロボットをつくる会社であり、同時に「未来の体験そのもの」を展示コンテンツにする会社でもあるわけです。工場見学へ行ったら、見学者のほうが先に姿勢を正してしまいそうです。

動画で注目したいのは、歩く速さより「表情」

人型ロボットのニュースでは、走る、跳ぶ、荷物を運ぶといった運動性能が目立ちます。一方、EX Robotsが力を入れているのは、表情や感情の伝わり方です。ロイターの2024年の取材では、同社がAIと小型モーターを用い、人の表情や動きを認識・再現する技術を開発していることが紹介されました。

この方向性は、受付、展示案内、教育、医療・心理支援など、人と対話する場面で意味を持ちます。正しい答えを返すだけなら画面上のAIでも可能です。しかし、目線、うなずき、表情まで伴うと、人が受け取る印象は大きく変わります。動画を見て「すごい」と同時に少し落ち着かない感覚があるなら、それは技術がいわゆる“不気味の谷”のかなり深いところまで来ている証拠かもしれません。

現在できていることと、将来像は分けて見る

ここは大事な点です。映像のインパクトが強いほど、「もう人間と同じように働ける」と考えたくなりますが、外観のリアルさと、判断・移動・作業を自律的にこなす能力は別の技術です。

  • 現在確認できる強み:リアルな外観、顔や首の細かな動き、展示・案内での高い訴求力
  • 今後期待される用途:教育、医療、心理的な支援、子ども向けサービスなど感情的な交流が重要な領域
  • 確認が必要な点:長時間の自律稼働、複雑な現場判断、量産価格、安全性、個人情報や倫理面の設計

ロイター取材時点では、製作期間は1体あたり約2週間から1カ月、価格は150万〜200万元と報じられており、主な用途は博物館などの展示でした。つまり「明日から各社の受付に一人ずつ」という段階ではありません。見た目は未来でも、導入稟議はかなり現実的です。

企業が見るべきは、ロボットそのものより体験設計

この映像から企業が学べるのは、「人そっくりなロボットを買おう」という話だけではありません。技術が人にどう見え、どう感じられ、どんな行動を生むかまで設計する重要性です。

展示会や商業施設では、人型ロボット自体が来場のきっかけになります。受付や案内では、単なる端末より話しかけやすさをつくれる可能性があります。一方で、説明不足のまま人間に近づけすぎると、警戒感や誤解も生みます。AIもロボットも、性能表だけでなく「利用者が安心して関われるか」を含めて設計する必要があります。

私たちは画面の中のAI活用を考えることが多いですが、AIが身体を持つと、UXはボタン配置だけでは済みません。目線ひとつ、間の取り方ひとつがインターフェースになります。未来はやって来るというより、すでに椅子に座って順番待ちをしているようです。

映像と情報の確認について

本記事の動画はご提供素材です。映像内の設備表記と公開情報からEX Robots関連と判断していますが、当社が撮影者・撮影日時・個々の機体名まで独自に確認したものではありません。また、映像に写るすべての人物・展示体がロボットであると断定するものではありません。

参考情報: EX Robots公式サイト、 Reuters(2024年6月11日)、 遼寧省政府によるEX未来科技館の紹介、 中国中央電視台による施設紹介

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UPSHARE編集部アップシェアの現場で得た知識やノウハウをお届けします。